そこに在り、ここに掛かる作品群から、我々はなにを感じ、読みとり、考えることができるのだろうか。桐生市市民文化会館のアートワークは、全ての作家が来桐して建築の現場に立ち、イメージし、デッサンをおこし、建築設計の思惑をも越え、新しい環境として対峙する、それぞれのオリジンの発見であった。
繭型の大屋根をいただく、極めて特異な建築に、おもねり寄り掛かることを避け、普遍的な構成美や、フレキシブルな感性の具現をテーマに、独立した存在として、負けることなく拮抗することをアートワークの意義とした今回のプロジェクトは、いくつかの画期的な作品を生みだした。
特筆すべきは、アトリウムに掛かる「STEELWEAVE 1」で、ステンレススティール糸とマクロゴーズ手法との出会いである。世界的テキスタイルプランナー新井淳一氏のインスピレーションをきっかけに生み出された画期的新素材と、老練なイギリスの哲人織師ピーター・コリンウッド氏の独自開発の織り技法とが、このプロジェクトで見事に融合した。
「STEELWEAVE 1」は、およそ後生、歴史的な出来事として認識されるに至るはずであり、まさにここ桐生でしか成し得ない、文字どおりの「桐生発世界初」だ。それは、伝統の基盤にたちつつ、遠い未来からの要請に応えるといった、極めて積極的な創造の仕事であった。
このようなクリエイティヴィティーあふれるチャンスに関われたことに感謝している。ぜひ、一つ一つの作品に向かい合い、作品からのメッセージを感じとってほしい。
with great appreciation,
Kiryu City Performing Arts Center Art Work Coordinator
Minori Yamazaki
May 1997